舞台「カレイドスコープ─私を殺した人は無罪のまま─」

独自の解釈とネタバレがございます。

観劇前に見るのはあまりオススメではございません。

 

ただ、観劇ってたのしいな、いいな、って思える作品でしたので

見ようかどうしようか迷っていらっしゃる方は是非。

オススメです。

 

 

観劇備忘録

2020/2/24  17:30-

カレイドスコープ─私を殺した人は無罪のまま─」

 新宿FACE

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演出:吉谷光太郎さん

舞台に行くようになってまだまだ浅いのですが、それでもわかるほどの役者の人選と吉谷演出。

これは観に行きたいよね、観に行くしかないよね、と友人と言い続けていたのですが、別現場とかぶってしまい、決めあぐねていたのですが、なんとか観れました……!

 

今、この文章を書き始めた時に改めて思ったのですが

「私を殺した人は無罪のまま」

って副題深読みするとめちゃめちゃしんどいな??????

後述します。 

 

ストーリーは、半年前に娘が自殺した(と思われる)父と、

その『真実を追求する』ために集められた10人による密室会話劇です。

 

詳細は公式HPへどうぞ

http://kaleidoscope-stage.com/

 

感想:観てよかった。本当に。

映像化されないの勿体無いと思いつつ、これは現地で観るべき舞台だと思ってもいます。

中央ステージの利点を存分に活かした作品だと思いました。

 

しんどかった。

終盤引くほど号泣してた。

嗚咽こらえるの必死(漏れてなかったと信じてる)で、顔面ボッロボロになりました。

いやまぁなんなら序盤~解決編()までは嘘だろ、そんなオチなの?いや、まさかね……ふぅん……かなしい……でもさぁ……(おこ)みたいな気持ちでいました。

 

そこから二転三転して最終結論でもうへへへへへへへ。

 

全編通していらない伏線がなく、全部必要な要素でした。

 

開場17:00で、私は17:10くらいに座席についたんですけど、最初座席間違えてんのか????ってくらいごくごく自然に場内にかすみちゃんがいてですね……。

黙々と雑誌読んでるんですよ。

定期的に座る椅子を変えて移動しながら。

雑誌毎日同じだったらもう飽きたろうなぁ……

 

そのまま時間になったら自然とはじまりました。

 

▼健一(山本裕典):めちゃめちゃ目立つ黄色いパーカー着てるなぁって思ってたんですけど、最初の暗転?ちがうな、ピンク色のライトのみ残して照明が消えた時に一人だけめちゃめちゃいな……って思ったんですよ。

黄色って、ピンクをあてると赤くなるのか……なんてかるく思ってました。へへへへへ。

 

終始何をしたいのかわからない、通称『決を採りたいマン』。

凌平(富田翔)の味方なのかなんなのか。

何がしたいんだ???コイツは……の疑念がずっとついて回ってました。

なんなら祥子(西丸優子)(凌平の姉)に『現実見なさい!いつまでたっても演劇なんて夢見て、アナタとうちの弟の出来の差よ!!!!』みたいなこと言われてる時、何も言い返さないのなんでだ……???って思ってました。結果気にしてないわけなかった。そらそーな。

その時どんな表情してたか見たかったなぁとは思いました。見えぬ角度でした。

最初から口を出すところと出さないところがあって、司会進行を自称する割にただの口論になった時に全く出てこないのがお前……って思ってました。

役者をしているからなのか妙に演技じみた話し口調だったり、立ち振る舞いだったりが目立ちました。山本裕典の見栄えと一致して、すごくよかった。

 

↓ネタバレ

 結果として彼がやりたかったことは何だったんだろう?

見終わった後に同行者と考察してたんですけど、『自分でもわからない』が正解なのではないかという結論に至りました。

バイトしなきゃ生きていけない役者生活をしている自分と

若くして地位も財産も家族も手にいれている親友。

どんな想いで親友の成功を見ていたんだろう。

そして、その親友が失意の底に堕ちた時、どうしてやりたいと思ったんだろうか。

二人の関係性を察するに、学生の頃までは健一の方が圧倒的に優位な立場だったんでしょう。

気が小さく、繊細で、膝を抱えて座り込むタイプの凌平に対して、

快活で、明るく、立ち上がって人の前に立つタイプの健一だったのかな。

それが気付いたら逆転していた。

自分は好きでこの場にいるはずなのに、そう思ってはいても、ぬぐいきれない格差は感じていたのだろうなと。

そこに、突然の不幸。

チャンス、だと思ったのかな。

自分に依存させる。

 

お前だけそこにいるの、ズルイだろ。

 

俺と同じところに、ちがうな、俺の後ろにいるのが、凌平だろ、かな。

 

あの会合を開いた理由自体は『健一だけが凌平の味方』という環境を作りたかったのかなと思いました。

その現れが不自然な決。

最初は全会一致で凌平の意見に賛同(一部強引ではあれど)していたはずの世界が、

少しずつ少しずつ反転していき、最終的には全会一致で反対になってしまう。

凌平にとってどれほどの絶望を与えただろうかと思うと心が痛い。

さらにそこから追い打ちをかけるような証言すら出てくるのだから創作者という人は人の心がないと思う。

 

 

▼凌平(富田翔):大手印刷会社経営。かすみの父。健一の親友。

しんどい大賞優勝。

娘ちゃんが自殺した、ってだけでしんどいのにその裁判負けそうになってて、さらには信じてくれてるのは検事だけ。

序盤から思ってんですけど、凌平が頑なに自殺だと認めなかった理由、心の底で、本人も薄々感じてたからだろうなって。自分が原因ではないかと。

幸せそうだった、って、笑ってたって言うけれど、離婚からの仕事ばかりであまりかまってあげた記憶も最近はなかったんだろうな。

仕事をしている理由が『自分は社長であり、社員の生活がかかっている』なあたり、仕事人間、っていうより実直な人だったのだろうと思います。

そんな人が、自分の娘が(自分のせいで)自殺ってことを認めてしまったら、心が折れてしまうよ。

だからこそ認められない。

あの子は幸せだった。

そう信じることで自分を守っていたのだろうなと思います。

心が弱い人だから。

 

 

▼夏樹(桑野晃輔):容疑者。

演出で無音のままめちゃめちゃかすみちゃん(凌平の娘)と仲良しアピってくるやん……。

それは誰の妄想なの、いや、これもしや、実際の光景なのでは???????

ってずっと思いながら見るのしんどかったーーーーー。

凌平の中では夏樹がかすみに手を出し、自殺に見せかけて殺したということになっている。

ただ、そもそもそのあたり明確に表現されていなかったのですが(ないよね?)『そういう行為があった事実』が欠片もなかったんです。

14分間の空白の時間で何が出来たって言う話ですよ。

 

夏樹が犯人だという理由が2つ。

①前科あり

②首を吊っていたロープが凡そ13歳の少女が結べる硬さではなかった

……よっわいんですよ。

 

そりゃ周りも諦めろムードになるって……。

 

▼五十嵐(磯貝龍乎):被害者の会さん。

序盤ちょーーーーーーーーじゃま!!!!

いや、なんなら最後までじゃまだったな???(失礼)

本当にお前は何なの????黙れ!!!!!って思ってました。

開演前の会場内で彼が署名集めてて、初見故になんの署名なのかよくわかってなかったんですよ。

説明開始前に既に挙手者が現れた結果、説明ないまま署名活動が始まってまして。

本編登場時に一般の方からの署名、という表現で漸く気付いた始末でございます。

被害者の会代表(?)のわりに、結構露骨に不機嫌になるし、かと思えば一方的に喋り倒すし、被害者の立場になって考えてみましょう……みたいな、理想論語りだすし、本筋ずれたところでわめくし、もう本当にじゃま……って思ってました。

健一の思惑通りだったんでしょうけども。

 

▼馬場(輝馬):検事。一応凌平の味方。

ちょーーーーーーーじゃま!その2

この人も主張が押し付けがましいというかその主張でよく裁判押し通そうとしたな???って思いました。

同じことしか言わんし、前科もち即ち再犯!!!!!なんて裁判で言って勝てるはずなくないか??????

ふたを開けてみたらこの人もこの人で思惑があって……って展開だったのでもうどいつもこいつも!!!!!

馬場と五十嵐が喋りださなければもっと早く久美が口出せた気がする……と思ったけど、そうでもないか????????うーん。

落としたフリスクティッシュで回収してるとこと窓から入らず時間をかけても玄関から入り直そうとする愚直さに賛同したとこから馬場が【実直さを優先させる真面目な人】なことを客が勝手に察するのではなく、脚本上で解説してくれたのすごい優しいな????と思いました。

 

▼影山(山田ジェームズ武):かすみの教師。

初めてのジェーだったのですけど、めちゃめちゃお芝居上手なのね?!?!?

お恥ずかしながらお仕事拝見したことがなかったので、SNSで見える限り陽キャパリピ(ごめんなさい)と思ってたんですけど(間違ってないよと言われた)、こんなに己を殺せるのだと知ってびっくりしました。

なんなら最初ジェーどれだ????ってなってました。顔でわかる。

この人がいることの意味ってなんだろうって改めて考えてみたんですが、

影山がいることで、かすみが学校内で悩んでたことが明るみに出ます。

ただ、同時に、裁判で都合の悪いことを馬場が凌平にも隠していたこと、を凌平が知ることになるわけです。

最初から凌平にとって裁判で勝つこと=かすみが自殺ではなかったことを証明するという意味では全面的に味方でいてくれる存在であった馬場が自分に嘘をついていた、隠し事をしていたことを知るわけです。

これも健一のシナリオには必要な要素だったんでしょうね。

 

▼祥子(西丸優子):凌平の姉。

この人もまた、凌平を孤立させるための要素ですね。

最初は凌平のために、凌平をこれ以上苦しめないでと繰り返していたのに、

解決編()でいざというとき全面的に支えることが出来ますか?と健一に問われ即答が出来なかった。

そりゃあそうでしょう。

自分にも守りたいもの、守らねばならないものがあるのですから。

 

▼久美(大島涼花):祥子の娘。かすみの第一発見者。

しんどい大賞準優勝。

めっちゃめちゃしんどいでしょう。

かわいがってた従妹が『私のお父さんだって××××』って言い残してそのまま……なんですから。

言いたくてもそれが原因かなんてわからないし、何をどう説明したらいいのかもわからない。

誰に何を言えばこれ以上傷が増えないのか、もうわからなくなってただろうなと思うと心の底からかわいそうだなと思います。

ただこの子はこの子で思うところはあったんじゃないかな……。

 

 

▼浅井(君沢ユウキ):ジャーナリスト。

あーーーーーーーもーーーーーーー。

色々思うところはあるんだけど、この人この場にいてくれて本当によかったね?!?!

HPで見たキャスト紹介ではもっともっとやなやつだと思ってました。

でも、想像していたよりもずっとプライドもってジャーナリストやってる人で驚きました。

売れる、面白い記事を書く為なら人の弱みでもなんでも構わず引っ掻き回すタイプかと思っていたら、己の信念のもとに動く人なんですね?

名前呼ばずにジャーナリストジャーナリストって馬場に呼ばれてる時に繰り返し浅井だ、浅井だって返してたあたりからちょっと人間味あるな、って思いました。

一番よかったのは、某人がナイフ出して周囲に突き付けた時、真っ先に凌平を背中に隠したんですよね。

この人が狙われている、この人を守らねば、が最初に脳裏に出たのだろうな、そしてそれを遂行したんだなと思ったらめちゃめちゃいい人じゃん……ってなりました。

 

 

▼以降解決編に関して。

 時系列が曖昧な記憶なのですが、

かすみと久美が庭で遊んでいた

かすみがいなくなる

 

みんなでデリバリーで昼食

祥子の誘いで夏樹もバーベキューに参加

かすみがトイレ(裏庭)に立つ

夏樹が後を追うようにトイレへ向かう

 

この後かすみちゃんってみんなと合流してないんですよね。

だめだな、時系列ごっちゃだな……

でも久美が最期に見たかすみは庭だったはず。

 

解決編・偽1と解決編・偽2があった結果こんがらがる。

 

【解決編・偽1】影山(教師)と久美の証言より

かすみは友人関係に悩んでいた。

自ら孤立していた。

学校生活が上手くいっていなかった。

友人らは何か辛いことがあってもあっという間に忘れて『笑っている』。

それが出来ないのは自分だけ。

そんな自分がつらい。

そんなことと思われるかもしれない、でもそれが辛くて人は死ねる。

 

【解決編・偽2】(夏樹の証言より)

かすみは父を嫌っていた。

かすみは死ぬほど父が嫌いだ。

かすみは母と父が上手くやってくれればそれでよかったのに。

自分を大事にしていると思っている父に反吐が出る。

だから死んでやった。

 

【解決編・真】(久美・夏樹の証言より)

かすみは父が好きだった。

かすみは死ぬほど父が好きだ。

かすみは父が自分のことを考えてくれればそれでよかったのに。

自分を大事にしてくれるというのなら死んでも良かった。

だから死ぬことにした。

 

 

……うっそだろ、最後が一番しんどいじゃないか。

 

 

かすみが故人なので、どうしてもかすみの感情は人伝の情報しかなくなってしまいます。

でも、回想のように垣間見えるかすみの表情だったり、態度が、かすみが凌平を嫌っていたようにはどうしても見えなかったんです。

なので、もし、解決編・偽2で終わっていたらいやいやいやいや、って突っ込んでいたところでした。

そんなわけなかった。

 

 

夏樹は自分の経験から片親とうまくいっていなそうな年下の女の子を励まそうと、なんなら背中を押してあげようと……

 

背中を押しちゃったんですね???????????????

 

うそだろーーーーー今気付いたよ……

 

年長者として、経験者として、背中を押すつもり、アドバイスのつもりで

【素直になれないまま死んでしまったらずっと後悔する。その前にちゃんとお父さんと話した方がいいよ】

と言ったつもりが【死んだらずっとそのことを想い続ける】と解釈されてしまった時の衝撃は計り知れないと思います。

動けなくなるほどかすみちゃん晴れ晴れとした良い顔してたんだろうなぁ。

 

まさか自分が年下の女の子の死してまで求める父への愛を肯定してしまうなんて思ってもみなかったんだろうな。

 

 

ここでタイトルの副題ですよ。

 

私を殺した人は無罪のまま

 

私=かすみ

かすみを殺した人=かすみであり、凌平であり、夏樹もかな 

 

誰も有罪じゃないんです。 

かすみは愛が欲しくて、関心が欲しくて自分を殺してしまった。

凌平はかすみを愛していたけれど、伝わってなくて、伝えていなくて、殺してしまった。

夏樹はかすみを後悔させたくなくて、経験を語ったはずが、かすみの心を揺らしてしまい、殺してしまった。

誰も罪ではない。無罪のままなんですよ。 

 

そんなこと、わかってるわかってる。

 

 

 

 

今、ひとしきり読んで思ったんですけど、

 

私を殺した人は無罪のまま

『私』が健一だったらどうしよう……って思いました。

 

健一にとって、自分を殺した人、ってきっと凌平で。

凌平がそれにあまりに無自覚だったから、という感情が少なからずあったとしたらあまりに、あまりに悲しいなって……。

 

そんなこと、わかってる、わかってる。